一九四一年、彼は、白内障と心臓障害を伴って生まれてくる赤ん坊が異常に多いことに気づき、これを前年の流行時に妊娠中であった母親の風疹感染に関係があると考えた。
母親の血液中のウイルスは胎盤を通り、胎児の体内で増殖して、発育中の器官を害するかもしれない。
風疹の発生が妊娠より早い時期であればあるほど、胎児への危険性はそれだけ大きくなり、損害もそれだけ大きくなる。
妊娠の一か月目に感染すると、胎児の器官が発育中であるため、ほとんどすべての胎児が影響を被る。
ところが、四か月目以後では胎児は十分に発達しているので、異常はまったく起こらない。
もちろん、子供のときに風疹を免れた母親だけが妊娠中にそれにかかる危険性があり、したがって今日ではこの危険性は風疹予防接種によって取り除くことができる。
血液中のB型肝炎や産道での単純疱疹のようなウイルスは、出産以前に胎盤を通じて母から子へ直接に伝染するばかりでなく、出産時に赤ん坊に感染することがある。
他方、サイトメガロウイルスやHIVのような他のウイルスは、母乳を通して母から子へと伝染することがある。
受容体をもつ細胞表面ここまでは私たちは感染というものをウイルス側の観点から眺めてきた。
すなわち、ウイルスがどのようにして宿主に侵入し、どのようにして細胞に入り込むか、そしてどのようにして自己の目的のために細胞を徴用するか、を見てきた。
ウイルスが誇示する工夫の才は驚くばかりであるが、彼らは一方的な戦いをしているわけではない。
どんなに簡単な生物でさえもウイルスを処理する方法をもっている。
しかし、人間の免疫系の精巧さと微妙さに匹敵するものはない。
私たちは生まれるとすぐ、そして一生を通じて毎日、その体は包囲攻撃下にある城のようなものであり、城壁を破り、侵入し、略奪しようと群がる敵の部隊によって取り囲まれている。
どの敵もそれぞれ特有の兵器を携行し、どの敵もそれぞれ異なる入口を攻撃している。
しかしまさに防備を固めた城のように、私たちの体は攻撃に耐えるようにつくられているのである。
最初の戦略は接近を防ぐことである。
このために私たちの体は、無傷のときは、貫通不可能な、厚い皮層で覆われている。
皮層は、互いにしっかり結合したレンガのような細胞の多くの層からなっている。
皮層の外側は平たい死んだ細胞の層で覆われている。
ウイルスは代謝的に不活性なため、死んだ細胞に感染することができない、したがって、彼らが体のなかに侵入するには、注入か傷によるか、あるいは自然の孔のひとつを通るしかないのである。
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